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Designing
New Context
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2025年2月8日夜、東京・渋谷の街で、上空に突然現れた非日常的な光景に驚き、歓声をあげる人々の姿があった。2200機ものドローンが夜空を彩り変幻自在に形を変える、*国内最大級のドローンショーが行われたのだ。
前代未聞の「渋谷上空」に突如出現した、大規模なドローンショー。実現の背景には、国内外から集結したプロフェッショナルたちの奮闘と挑戦があった。その舞台裏を取材した。
8日夜、代々木公園の特設会場では、小室哲哉氏、日向大介氏、キャリー鈴木氏によるライブ音楽に乗せて色とりどりに光るドローンが舞い上がった。螺旋状に隊列を組んで夜空へ向かった機体はやがて、渋谷の街並みや、日本画の「墨龍」をモチーフとしたアートを力強く描いた。
その後、未来から来たキャラクター「デジハチ(DiGi8)」がコミカルに出現し、会場に「Get Wild」が流れると、観客の盛り上がりは最高潮に。「渋谷から、未来を切り開け」のメッセージとともにペンギンが海に飛び込み、クライマックスでは、2億年前に地球に存在したとされる大陸「Pangaea(パンゲア)」が、人類の調和の象徴として描かれた。
今回のドローンショーは、2月に渋谷区共催により開かれたアートとテクノロジーの融合イベント「DIG SHIBUYA 2025」初日の目玉コンテンツとして行われた。発案したのは、デジタルガレージ社長の林郁だ。2年目となる「DIG SHIBUYA 2025」をさらに盛り上げたいとの相談を受け、イベントの象徴になりうるドローンショーを提案したという。
「どうやったら世界に誇れるイベントに成長できるか。音楽と日本的なキャラクターを掛け合わせたシンボリックなイベントを一つやった方がいいんじゃないか、と」(デジタルガレージ林社長、8日のドローンショー開会あいさつで)
すぐさまデジタルガレージの起業家育成プログラムの卒業生であるドローンイベント企業・レッドクリフや、音楽プロデューサー・日向大介氏らへ声をかけ、前代未聞の「渋谷上空でのドローンショー」の実現に向けて各分野のプロフェッショナルたちが結集していった。
ショーの鍵を握る演出家に決まったのが、東京パラリンピック閉会式や明治神宮外苑での「TOKYO LIGHTS」など国内外の数々の大型イベントの演出を手がけてきた、潤間大仁氏だ。ドローンショーの演出経験が多い潤間氏にとっても、今回のショーは特別だったという。
「これまで色々なドローンショーを手掛けさせていただいた中で『いつか東京のど真ん中でできたらいいな』と思っていたのですが、今回はまさにそういったご依頼でした。レジェンドともいえるアーティスト・クリエイターの皆様とご一緒し、ドローンをやる上で夢のようなプロジェクトに参加させていただけたと思っています」
ショーの構成は「東京・渋谷から世界へどんなメッセージを発信していくべきか」というコンセプト部分を大切にし、デジタルガレージ 林社長のアイデアも採り入れながら組み立てていったという。2200機という国内最大規模の機体数でないと描けないことや、初めてドローンショーを見る人でも直感的に楽しめるショーにすることにもこだわった。
「空を見上げるショーなので、物語の始まりとして、非日常的な、宇宙的な世界に入り込めるようなイントロを考えました。 0と1で構成されるデジタルの世界を表すような螺旋状の渦が移動し、それが徐々に変化して『墨龍』を描く。渋谷のデジタルとアートの融合というコンセプトを伝えた後、進化する墨龍が飛び立ち、可愛らしい『デジハチ』が未来からやってきて渋谷でパーティーをする。そして元々一つだったという大陸『パンゲア』を描く。渋谷が、人種などの垣根を越えて、国内外の色んな才能や文化が集まる楽しい街であってほしいというメッセージを込めました」
ショーを作り上げる中で苦労したのは、構成に合わせ、プログラミングやアニメーション、音楽や光り方を1秒のずれもなく合わせ、一体的に世界観を作り上げていく地道な作業だ。
「大きな構成を作ってプログラミングをどんどん作っていく段階で、ドローンが1つの絵を描く時間などがわかってきます。そこから音楽制作チームとキャッチボールしながら、尺の調整や世界観を短期間ですり合わせていきました。音楽に合わせて、ドローンの光り方もシンクロするようにギリギリまで調整してもらいました。1秒でもずれると違和感が出てしまうので、 例えばデジハチのサングラスの光り方も、小室さんの曲のビートに全部がきちんとシンクロするようにしてあるんです。
他にもこだわったのが、絵と絵の間を絶対に暗転させず、15分間ずっと絵が表示されている状態にすること。そのためにアニメーターの方々と機体の移動の仕方を細かくパズルのように設計していくのですが、その作業には非常に時間をかけました」
トップクリエイターと技術者たちによる努力とこだわりの結晶ともいえる、今回のドローンショー。潤間氏は、このイベントが継続し、東京の新たな象徴になればと期待している。
「多くの人が一度に見上げて、その瞬間だけみんなが思いを一つにできるという体験が、ドローンショーのおもしろさや醍醐味だと思います。世界中に知ってもらえるようなイベントとなったらいいなと思いますし、このために海外から東京に来てもらえる、そんなイベントになるとすごくいいなと思っています」
今回ドローンショーに登場したお茶目なキャラクター「デジハチ(DiGi8)」をデザインしたのは、デジタルクリエイターのJames Bigtwin氏だ。印刷物デザインや3Dグラフィックの先駆者として、アメリカを中心に活躍してきた。デジタルガレージの渋谷オフィス移転を契機に「ハチ公に関わるようなキャラクターを作ろう」との林社長の発案で、デジタルガレージ創業初期からWEB制作などに関わっていたJames氏に白羽の矢が立ち、デジハチが誕生。今回のドローンショーが初披露の場となった。
自身も大の犬好きというJames氏は「夢のような仕事」と表現。世界的に知られるハチ公の物語を尊重しながらも、サイバー感のある未来的なハチ公をデザインしたという。James氏は8日の「DIG SHIBUYA 2025」開会イベントで、デザインに込めた思いをこう語った。
「デジハチは、世界中で忠誠と忍耐の象徴として知られるハチ公のデジタル版です。2050年の未来からやってきた忠犬ハチ公の生まれ変わりという設定で、『感情連動未来型ゴーグル』をかけ、しっぽには8G対応のアンテナを搭載しています。デジハチが渋谷のテック業界にとってポジティブなシンボルとなり、ハチ公の教えが永遠に語り継がれることを願っています」
ドローンショーでは巨大なデジハチが空に描かれ、そのゴーグルには「渋谷」の文字が浮かび上がり観客を沸かせた。「『イヌベーション』の精神で前進し、デジハチが将来、動画やインターネット、渋谷周辺のアートワークで見られるようになり、渋谷の街やテクノロジー分野を代表して人々や子供たちの注目を集めるようになってほしいと思っています」
ドローンショーは、分かれていた大陸が集まり一つになっていく「パンゲア」をモチーフとした演出で締めくくられ、ショーが終わると夜空を見上げていた人々からは拍手や歓声が沸き起こった。林社長は「残念ながら今はドローンと聞くと戦争を連想してしまう世の中ですが、平和の象徴となるようなイベントになればと思います」と、ショーに込めた思いを語る。
林社長は「神宮の花火大会と並ぶような環境に配慮した、未来都市渋谷にふさわしいイベントへと育っていくことを願っています」と、渋谷から世界に誇るコンテンツに成長していく未来へ期待を込めた。
DIG SHIBUYA DG DRONE SHOW
2025年2月8日に渋谷上空で初開催された、国内最大級のドローンショー。アートとテクノロジーの祭典「DIG SHIBUYA 2025」のオフィシャルパートナープログラムとして行われた。
https://www.garage.co.jp/droneshow2025/