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【DG×りそな 提携の軌跡#3】次世代フィンテック編:金融機関とテック企業が挑む新規事業開発

デジタルガレージとりそなホールディングスは、決済事業の強化・シェア拡大と次世代Fintech事業の推進を目的に2022年、資本業務提携を締結。さらに2023年には提携を強化し、スタートアップ投資を通じたオープンイノベーション事業でも協業をスタートした。連携の具体的な内容や、目指す未来について、全4回の連載でお届けする。

第3回目のテーマは「次世代フィンテック」。提携の狙い、事業開発戦略、今後の展望について、両グループの事業責任者と事業開発担当者に話を聞いた。


<Speakers>
株式会社りそなホールディングス DX企画部長 伊藤 洋平
株式会社りそなホールディングス DX企画部 DXプロデューサー 青野 俊介
株式会社デジタルガレージ 執行役員 冨永 大輔
株式会社デジタルガレージ 執行役員 新規事業担当 崎島 淳一
株式会社デジタルガレージ コーポレートデベロップメント本部 副本部長 藤巻 直也

(所属・肩書は公開時点)


決済サービスのコモディティ化が進むなか、新たな価値提供を目指して

デジタルガレージとりそなホールディングスは、共同開発より前から、フィンテック領域に可能性を感じ、事業展開を進めていた。

冨永:デジタルガレージは2021年からグループ戦略として「DG FinTech Shift」を掲げ、決済とデータ、テクノロジーの融合を核とした新しい価値創造に取り組んでいます。金融業界は日本でも有数の市場規模となっていますが、これまでは金融庁監督のもと厳しい規制が設けられ、非金融事業者にはなかなか新規参入の難しい状況でした。しかし技術の進歩にともない、銀行が外部企業にAPIを提供するといった動きも生まれており、ITと金融の融合は大きな市場機会になると感じています。

また、「あらゆる産業がフィンテック化する」という産業全体の潮流もあります。日本でも多くのPOSシステム会社が決済事業を開始しており、Amazonのような海外の巨大テック企業もフィンテック事業をスタートしています。決済事業で有数のシェアを持つデジタルガレージとしてもこのビジネストレンドを最大の機会と捉え、フィンテック事業への注力を決めました。

決済サービスのコモディティ化が進むなか、フィンテック事業を通じて新しい価値を提供するためにも、りそなさまの金融知見を活用したいと考えております。お客さまから求められる金融サービスへのニーズに対して、決済サービスが担える役割はほんの一部です。りそなさまは、送金や融資等、決済以外の金融サービスに関しても、これまでの実績や銀行ライセンスも含めた総合的な知見があり、最高のパートナーだと考えています。

伊藤:りそなホールディングスとしても、世の中の流れに対応すべく、フィンテックへの参入には早くから取り組んでいました。実はもともと他社に先駆け、デジタル活用を進めており、その一例として、アプリを通じたお客さまの行動データの取得・分析に取り組んでいました。

経済における基本的な構造はいわゆるBtoBtoCであり、企業活動と家計とは、銀行を仲介者として密接にリンクしているわけです。その前提で考えると、あらゆる取引の間に立つ我々としては、単純に決済機能の提供をおこなうだけではなく、各業界における人・モノ・金の流れをデータとしてとらえられないかとトライしてきました。蓄積されたお客さまの行動データは、経済の流れや消費者の行動を予測することに活用可能です。

分析結果をもとに、銀行機能をどのようなかたちで今の経済の流れに組み込むのか、検討を進めるつもりです。りそなホールディングスとしては、社会全体のお金の流れをデータとしてとらえつつ、新しいサービスを開発するうえで最新の知見をもっているデジタルガレージさまはパートナーとしてぴったりの存在でした。

両グループの専門領域を掛け合わせ、短期間で複数のサービスを発表

両グループは本格的な共同開発スタート後、1年足らずで複数のサービスを生み出した。2025年1月現在、医療業界特化型決済サービス「CurePort」とB2B決済サービス「請求書カード払いオンライン」の2つがサービスインしている。

医療業界特化型決済サービス「CurePort」

「待たずに帰れる」をコンセプトに開発された決済サービス。患者側が、受診前に専用のモバイルアプリを通じて必要な情報を登録しておくことで来院時、受付に備え付けられたチェックインのQRコードを読み込むだけで、診療が終わった後、会計を待たずに帰宅できる。

関連リリース:デジタルガレージ、りそなHDとの共同運営により、診療後すぐに帰宅できる医療業界向けオンライン決済サービス「CurePort」の提供を開始
関連記事:受診時の会計をオンラインで完結。医療DXを推進する決済サービス「CurePort」始動 (2025年3月26日)

B2B決済サービス「請求書カード払いオンライン」

銀行振込の請求書をクレジットカード払いに切り替えることで、実質的な支払い期日を繰延できる決済サービス。りそな決済サービスが、デジタルガレージを通じてお客さまの請求書の振込を代行することで、カード払いに対応していないお取引先に対しても、クレジットカードを利用した支払いが可能となる。

関連リリース:デジタルガレージ、りそなグループとB2B決済サービス「請求書カード払いオンライン」を提供開始
関連記事:キャッシュレス決済に「第2の波」B2B決済市場が急成長 (2024年5月3日)

規制が多い金融領域において、短期間で次々と新サービスを生み出せる背景には、両グループの覚悟と挑戦があった。

青野:りそなホールディングス内での具体的な事業開発の流れとしてはまず、新規事業の「種」を集めるところからスタートします。その後は、顧客の特定、課題解決策の立案、ユーザーインタビュー、コンプライアンス上のリスク検証など、一般的な事業開発の工程を経て、PoCスタートの最終判断をおこないます。特徴的なのは、一つひとつのプロジェクトを、3ヶ月サイクルで回すことです。役員や部長への各プロジェクトの進捗報告は毎月おこなわれ、検討が十分でないプロジェクトは3ヶ月経たずにクローズすることもあります。

冨永:大企業であるほど、新規事業立ち上げには、時間をかけて検討する傾向が強いです。しかし我々は、事業の質だけでなくリリースまでのスピード感も重視をしています。時間をかけ、誰もが納得する案をつくりこむよりも、実際にお客様にサービスを使って頂き、いただいたフィードバックをもとに改善をしていく方が、結果的にはお客さまに使い続けていただけるサービスが早く開発できます。    

伊藤:デジタルガレージさまは新規事業づくりにおけるお客さまへの理解が深く、その考え方やスタンスは大きな刺激になります。デジタルガレージさまは一つひとつのプロジェクトにおいて、お客さまの動きを理解することに徹底的にこだわっており、「お客さまはどのような動きをするか」「どのような導線であれば満足してもらえるか」「サービス利用中、どのような心理状態か」など細かく仮説を立てます。そのような踏み込み方には学びが多く、りそなホールディングス側の発想がどんどん豊かになっていることを感じます。

これまでとは異なる、新規事業づくりに挑戦するりそなホールディングス。同社からデジタルガレージへと出向し、実際に新規事業づくりに取り組む藤巻氏はどのように感じているのか。

藤巻:一言で言うと、「楽しい」です。個人的に新しい挑戦の機会を求めていたことに加え、私を含め、デジタルガレージさまと関わるりそなホールディングスの仲間たちが、毎日のように成長している様子に大きな刺激をもらっています。今回の協業で生まれた化学反応が、りそなホールディングスの中を駆け巡り、グループ全体が変わるきっかけになると感じており、グループの大きな転換点に居合わせていると感じます。

デジタルガレージ×りそなホールディングスで、日本経済の活性化、世界一のサービスづくりを目指す

最後に、共同開発の展望について、それぞれに聞いた。

伊藤:引き続き、お客さまに寄り添ったサービス開発を続けたいです。加えて、未来のりそなホールディングスを牽引するような人材の育成も、共同開発を通して続けたいです。両グループの人材交流が進むことで、相互のカルチャーやアセットについてお互いの理解が深まり、よりダイナミックな取り組みができるとも考えています。両グループのアセットをさらに密接に連携させ、お客さまに寄り添ったサービスづくりができればと思います。究極的には、お客さま自身が気づかないうちに利用が終わっているような、暮らしに溶け込んだサービスを生み出し、世界のデジタルシフトに貢献したいです。

冨永:デジタルガレージはこれまで、決済やマーケティングをコアにさまざまな事業を展開してきました。いずれの事業も、民間消費が市場の規模と成長性に大きく影響します。グループ全体のさらなる価値向上のためには、キャッシュレス化への貢献はもちろん、DXサービスを通じて、加盟店様の売上拡大に資するような課題解決や機会提供が不可欠と考えております。    

とはいえ、人口を増やすことは難しいなか、市場に流れるお金の循環サイクルを早めることで、消費拡大に寄与できるのではと感じております。りそなさまをはじめ、金融機関が提供する信用供与は、まさにお金の流れをスムーズにするサービスです。りそなさまとデジタルガレージのアセットを共有し、共同開発したサービスを通じて多くのお客さまの事業活動を推進できればと考えています。「りそなとデジタルガレージの提携サービスを使うと、事業が圧倒的に伸びるね」と言ってもらえる存在になりたいです。

青野:新規事業づくり担当者としては、りそなホールディングスでは関わりがもてなかったIT企業と、デジタルガレージグループさまを介して連携し、まったく新しい事業づくりにチャレンジするつもりです。個人的には、エンタメ領域に関心があり、何かサービスがつくれるといいなと思っています。銀行にとって若年層へのアプローチ手段は限られており、そのような状況を変えるきっかけがつくれればと思います。

藤巻:私は、りそなホールディングスからデジタルガレージグループさまに出向している立場として、両グループのハブになり、人と人とをつなぐ存在になりたいです。新規事業づくりに携わるなかで結果を出すには結局、人と人との関係性の深さが重要だと痛感しました。企業同士の協力関係を越え、両グループが円滑にコミュニケーションできる支援を続けたいです。世の中で話題になるサービスが生まれ続ける環境を、つくれればと考えています。

崎島:今回の連携を通じて、グローバル事業の開発にも大きな事業機会があるのではないかと考えています。日本発で、フィンテック領域において世界で存在感のあるサービスはまだ少なく、その先駆けになるチャンスがあります。海外企業と取引をする日本企業は多く、そのような事業者のニーズに応えるには、クロスボーダーの決済や金融取引にも対応していく必要があります。世界の多くのフィンテック企業はスタートアップで、本領域の事業を成功させるには、何度も出てきているキーワード「スピード」が重要です。

ただし、スピードが重要な一方で、決済を含む金融事業では、事故などが起きると取り返しのつかない事態になる恐れもあります。そうならないためにも、金融業におけるスペシャリストであるりそなさまと組めていることは非常に大きく、デジタルガレージグループが持つ強みと組み合わせて、日本一、世界一への挑戦を続けたいです。

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