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デジタルガレージとりそなホールディングスは、決済事業の強化・シェア拡大と次世代Fintech事業の推進を目的に2022年、資本業務提携を締結。さらに2023年には提携を強化し、スタートアップ投資を通じたオープンイノベーション事業でも協業をスタートした。連携の具体的な内容や、目指す未来について、全4回の連載でお届けする。
第1回目のテーマは「業務提携の背景」。具体的な提携内容と合わせてお伝えする。
2022年11月、デジタルガレージとりそなホールディングスは資本業務提携を締結した。かねてより取引があった両社が提携に踏み切った背景には、協業により生まれるシナジーの大きさがあった。
決済とデータ、テクノロジーを融合したグループ戦略「DG FinTech Shift」を掲げるデジタルガレージにとって、国内の9割超を占める中小企業(SMB)のDXは取り組むべき大きな課題だった。自社が蓄積してきた知見を多くの企業に還元し、SMBのDXに貢献することで、日本経済の活性化、次世代のビジネスモデル創造に貢献したいと考えていたのだ。「リテールNo.1」を掲げ、SMBに強固な顧客基盤をもつりそなホールディングスは、まさに最高のパートナーだった。
一方、りそなホールディングスにとっても、デジタルガレージが持つ事業基盤や顧客ネットワークは重要だった。決済領域のアセットを活用しつつ、自社サービスの変革を図りたい狙いがあったという。決済インフラや技術力を有するデジタルガレージと提携することで、成長分野である決済領域の事業強化・拡大を図るとともに、従来の銀行の常識や枠組みにとらわれない「次世代リテールサービス」の実現が可能になると考えた。
両社は2023年12月、資本業務提携のさらなる強化について合意。経営資源のさらなる融合を図り、双方の中期経営計画の注力事業として掲げる「決済事業の強化・シェア拡大」「金融・DXサービス等の次世代Fintech事業の成長加速」を目標に掲げた。
資本業務提携にあたり、デジタルガレージ代表取締役兼社長執行役員グループCEO 林 郁氏は「銀行法の緩和等、地域・社会の課題解決に対する金融機関への期待が高まるなか、本提携強化は両社にとって大きな成長機会になると期待しています。『リテールNo.1』 を掲げ、国内有数の法人顧客や有人拠点、そして、法人ビジネス人材および金融知見を有するりそなホールディングスとの提携強化を通じて、『DG FinTech Shift』 をさらに加速させ、日本の次世代ビジネスモデルの創造に貢献していきます」。
りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長兼グループCEO 南 昌宏氏は「本提携強化を通じて双方の強みを融合させることで、多様化・高度化するこまりごと・社会課題を解決し、両社の決済ビジネスの飛躍的な成長を実現できると確信しております。優れた決済ソリューションやグローバルなスタートアップエコシステムを有し、さらには未知の領域に勇敢に挑むファーストペンギンスピリットを体現するデジタルガレージとの提携強化を通じて、リテールのお客さまに全く新しい決済体験を提供し、これまで以上にお客さま・地域社会に貢献してまいります」と、それぞれコメントを発表した(一部抜粋)。
デジタルガレージとりそなホールディングスの提携内容は、大きく3つの軸にわかれる。
1.決済事業: りそな決済サービスを中核とした一体営業体制を通じ、りそなグループの法人顧客50万社へ決済サービスを提供 |
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2.次世代Fintech事業: 多様化する顧客ニーズに応える次世代Fintechサービスを共同開発し、両社の顧客向けに提供 |
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3.スタートアップ投資を通じたオープンイノベーション事業: 投資ファンドの共同運営と先進技術・ビジネスモデル取込による成長加速 |
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提携強化の発表から約1年、各軸での取り組みが着々と進行中であり、すでに成果が出始めている。
決済事業においては、2024年4月、デジタルガレージによる、りそな決済サービス株式会社の株式取得と持分法適用会社化が実行された。それに伴って、両グループ間のサービス連携や人材の行き来が活発化。両社の決済関連事業のさらなる拡大が実現しつつある。
次世代Fintech事業としては、本格的な共同開発スタート後、1年足らずで3つのサービスを発表。医療業界特化型決済サービス「CurePort」、飲食店の与信リスクを評価するAIモデルを活用した「りそなデータローン(仮称)」(現在PoCを実施中)、B2B決済サービス「請求書カード払いオンライン」など、いずれのサービスも特定の業界に特化した新しい金融サービスだ。今もなお多くの構想が生まれており、今後も両者のアセットを活用した新規事業づくりと両顧客へのサービス提供は、ますます加速する。
スタートアップ投資とオープンイノベーション事業としては、2024年4月、両社グループで共同運営するコーポレート・ベンチャーキャピタルファンドとして「DGりそなベンチャーズ1号投資事業有限責任組合」を設立。財務リターンだけでなく、戦略的なリターンを得るための投資先選定を進めており、さまざまなスタートアップとの接点が新しく生まれている。
引き続き両グループは連携を深め、3つの軸を起点に、既存事業の提供範囲拡大とまったく新しい事業創造に挑む。
決済事業については、両グループの連携で価値提供範囲を拡大し、大企業のみならず地方の中小企業にもサービスを届け、日本全体のDX化への貢献を目指す。次世代Fintech事業、スタートアップ投資を通じたオープンイノベーション事業としては、両グループのアセットを掛け合わせ、これからの時代に求められる新しいサービスの創出を目指す。
いずれの事業も、共通するのは日本経済への貢献。両グループともに、既存事業によるDX推進と新規事業でのイノベーションを通じて、社会全体のお金の循環サイクルを早め、日本経済の活性化を目指す。その結果として、自グループの社会的価値向上にもつながると信じているのだ。
次回からは、「決済事業」「次世代Fintech事業」「スタートアップ投資を通じたオープンイノベーション事業」それぞれについて、各事業責任者に詳細を聞く。両者の狙い、具体的な取り組み内容、生み出された成果、今後の展望など、現在地をお伝えする。