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【キャッシュレス最前線#03】帝京大学ラグビー部はフィールド外でも合理的! – 「100%キャッシュレス化で部活動の未来を変える」

【連載:キャッシュレス最前線】
日常生活に急速に広がりつつあるキャッシュレス決済。企業や団体は、より便利なサービスや更なる業務効率化を実現しようと、さまざまな場面でキャッシュレス決済の導入を加速させている。「そんなこともできるの?」「そんな場所でも使えるの?」とヒントになるようなキャッシュレス決済の活用の最前線を取材し、連載でお届けする。

大学選手権3連覇を達成し、4連覇を目指す帝京大学ラグビー部は、部の運営に関わる費用をキャッシュレス決済で徴収している。現金を扱うリスクを取り除き、選手たちがよりラグビーに集中できる環境を整えるためだ。帝京大学ラグビー部監督の相馬氏、ラグビー部OBで部活動を支援する山地氏、そしてラグビー部4年生で会計係を務める小玉氏に、キャッシュレス決済を導入した背景と具体的な活用方法について話を聞いた。

帝京大学ラグビー部会計係

140人の部活動費を現金で扱う、学生の負担やリスクが課題に

政府は2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にするという目標を掲げ、その比率は順調に伸びている。一方で、教育機関では教材費、部活動費、給食費などの多くが現金で支払われている。保護者から学生が現金を受け取り、担当者に直接支払う現場もある。

学生が現金を扱う場合、紛失や盗難への不安といった心理的負担だけでなく、現金の振込や受領などの物理的負担も大きい。さらに、部活動に励む学生の場合、寮費や遠征費、食事代、備品代、チケット代などの支払いがかさみ、扱う金額も一般の学生に比べて高額になる。

これらの決済をすべてキャッシュレス化したのが、帝京大学ラグビー部だ。同部は1年生から4年生まで約140人が所属し、AチームからDチームで編成されている大規模な組織である。練習試合と公式戦を合わせ、年間約60試合を行っている。2017年度には大学選手権9連覇を達成し、昨年は大学選手権を3連覇した。今シーズンは4連覇を目指す、ラグビー界でも屈指の名門校だ。

帝京大学ラグビー部練習風景

名門校のグラウンド外での合理的な取り組み

運動部は通常、縦型の組織で、グラウンド外での事務作業は下級生が行うと考えられがちだが、帝京大学ラグビー部は違う。上級生が会計などの事務作業から、掃除や食事などの日常業務を下級生と共に行い、トップダウンではなく上級生が下級生をサポートする組織体制となっている。入学したばかりの下級生は、新しい環境に適応するための負担が大きいため、その負担を軽減し、ラグビーに集中できる環境を整えることが目的だ。

その中で、会計係は3、4年生の上級生が担当し、組織運営に欠かせない資金管理を学生自らが行っている。相馬監督は、「会計係は、お金だけでなく、部内の情報も扱うため、信頼できる学生でなければなりません。そのため、キャプテンや他の役割も重要ですが、何よりも会計の担当者を最優先で決めています」と語った。

4年生で会計係を担当する小玉氏は、「部のすべての活動費を徴収していました。食事代、プロテイン代、寮の光熱費、試合観戦のチケット代など、多岐にわたります。学生は銀行で現金を引き出し、会計係に手渡ししていました。会計係は名簿と照らし合わせて集計し、お金を管理・保管し、銀行に振り込むという作業を行っていました」と、以前の徴収方法を説明する。

約140名の部員から費用を徴収・管理することは、時間が取られるのはもちろんのこと、心理的にも大きな負担であり、現金を所持している間はセキュリティ上の理由から、行動にも制限がかかることもあったという。

会計を行う部屋にて、会計係を務める4年生小玉氏

QRコードで簡単に支払えるキャッシュレス決済を導入

現金を扱うリスクや事務作業の負担が大きいことに問題意識を抱いていたのは、監督だけでなく、OBや保護者も同じだった。相馬監督は、OBとして部活動を支援する山地氏にこう相談した。「学生が毎月高額な現金を扱うこと自体が不健全です。すべてをクレジットカード決済に切り替えたい。このご時世、飲食店でもカードリーダーで決済ができるので、同じような仕組みを導入できないでしょうか」

山地氏らは、学生がより部活動に集中できるように環境を整えたいとの思いから、キャッシュレスで部活動費や備品の支払いができるサービスを比較検討した。通常のキャッシュレス決済ではクレジットカードやQRコードを読み込むリーダー端末が必要となるが、端末の不具合のリスクや管理コストがかかる。また、ネット回線のない場所では端末が使用できないという問題もあった。そこで、支払う側のスマートフォンでQRコードを読み取るだけで支払い画面が立ち上がり、クレジットカードやQRコード決済が簡単にできるキャッシュレス決済サービス「Cloud Pay Neo(クラウドペイネオ)」を導入することに決めた。

壁に掲示されたQRコードを読み込み部活動費を支払う様子

会計係の負担を軽減し、セキュリティも向上

「Cloud Pay Neo」の導入によって、部活動費の徴収はどのように変わったのか。

「部活動費の徴収日に銀行へ行き、現金を引き出す必要がなくなりました。また、保護者に指定口座への振込を依頼する手間もなくなりました」と、その変化を部員は語る。会計係の小玉氏は、「現金で集めていたときは、集金日に支払いを忘れ、後日バラバラに持ってくる部員も多く、管理が非常に大変でした。試合のチケットも、当日の現金受け渡しがなくなり、チケットを渡すだけで済むようになったので、とても楽になりました。また、決済完了のデータが残るため、名簿と照らし合わせて支払いを確認する集計作業の時間も大幅に削減されました」と話す。

現金の扱いがなくなったことで、相馬監督とOBの山地氏も「ほぼ全員の部員が同日に大金を所持することがなくなり、部員も会計係も安全になった」と、安心している。

スムーズな運用で「将来も引き継がれる仕組み」に

左:OB山地氏、中央:相馬監督、右:会計係小玉氏   

Cloud Pay Neoは、学生の負担を大幅に軽減し、保護者にも安心感を与える仕組みだ。導入から運用に際して、DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)の担当者は、会計係の小玉氏や相馬監督、そしてOBの山地氏と協力し、打ち合わせや会計現場での調整を重ねながら現在の仕組みを作り上げた。

「現金の取り扱いに関する問題を山地さんに相談し、解決していただいたことは本当に感謝しています。会計係やDGFTの担当者が変わっても、この仕組みが後輩たちに引き継がれ、負担を減らしていければと思います。他大学のクラブにも、ぜひこの仕組みを活用していただきたいです」と、相馬監督は今後の期待を語った。

※ QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

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端末レス決済サービス「Cloud Pay Neo」

訪問販売・サービスや店舗等でのお支払い時に、お客さまのスマートフォンでQRコードを読み込むだけで支払画面が立ち上がり、カードやQRコード決済で簡単にお支払いができる端末レス決済サービス。DGフィナンシャルテクノロジーと加盟店契約を行うだけで決済環境を整えることができる。

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