Designing
New Context
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個人や法人が自由にWebサイトを作成できるようになってから約30年。今や存在が当たり前になった企業のWebサイトは、ブランドイメージや売上にも直結する。1990年代後半には日本でもECが誕生し、その市場規模はB2Cで22.7兆円、B2Bで420兆円を越え(令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査))、今後も拡大を続けることが予測されている。
ブランディングや売上増加に向け、Webサイト担当者が活用するツールとして「ユーザーテスト」がある。ページの検証や課題の洗い出しをすることでWebサイトの効果を高めるその手法は今、「AI」によって更に進化しようとしている。
AIを使ったユーザーテストの最前線とは?2024年4月24日から開催された展示会「第33回Japan IT Week春」で自社のユーザーテスト「ソクラテスト」のアップデートを発表したナビプラス株式会社の田村大地氏と浅沼咲氏に聞いた。
ナビプラス株式会社 事業企画部
田村 大地
2019年にナビプラス株式会社に入社。EC事業者向けマーケティングサービスのカスタマーサクセス、マーケティングなどの経験を経て、現在は事業企画部で新規サービスの企画・開発を行っている。「ソクラテスト」の立ち上げにも携わる。
ナビプラス株式会社 セールス&マーケティング部
浅沼 咲
2019年にナビプラス株式会社に入社。カスタマーサクセスチームとしてEC事業者向けマーケティングサービスの提案や支援を行い、現在はマーケティングチームとしてサービスの販売促進を行なっている。
ユーザーテストとは、サイトを一般ユーザーに利用してもらい、評価されている点や改善点を収集するテストのことだ。その重要性について、浅沼氏はこう語る。
「Webサイト担当者はどうしても事業者視点に偏ったサイト改善策を取りがちで、結果としてユーザーにとって使いづらいサイトになることがあります。例えばコンテンツが多いほど満足度が向上すると考え、コンテンツの量を増やしたというケースでは、見るべき場所(コンテンツ)が多くなり、ユーザーがどこを見たらいいのかわからない迷いやすいサイトになってしまっていました」
良かれと思った改善策が実はそうではなく、逆の方向に進んでしまっていたーー。ユーザーテストでそのことに気付き、方向転換する事業者も少なくないという。
このような事例を聞くと、必ず実施すべきではないかと思えるユーザーテスト。だが、実はまだ一般的でなく、一部の事業者のみが実施している状況だという。ユーザー目線の大切さを知りつつも実施が難しい背景には「3つのハードル」があると、田村氏は指摘する。
「1つ目のハードルは、人を集め、テストの種類や質問を考え、意見を収集し、分析する、といった『手間』のハードルです。2つ目は、『コスト』。例えば外部のコンサルティング企業に依頼すると、数百万円がかかります。最後は1つ目の手間にも関連しますが、『時間』です。ユーザーテストは考えることや準備するものが多いため、数ヶ月かかることも珍しくありません」
このような課題を解決すべく、ナビプラスが2023年から提供を始めたユーザーテストサービスが「ソクラテスト」だ。質問項目の設計が不要で、被験者の募集から結果集計までが自動化されており、すべてオンラインで完結できる。浅沼氏はサービスの反響について、こう語る。
「『ユーザー視点でのサイトの改善点がわからない』『改修したけど、本当に使いやすいサイトになってるかわからない』といった悩みを抱えた事業者様から多くお申し込みをいただきました。一般のユーザーに自社サイトと競合サイトを使っていただくことで、比較が可能になり、課題を明確にすることができます」
「ソクラテスト」では実際に一般のユーザーにサイトを利用してもらい、サイトの「使いやすさ」に関する5段階評価、評価ポイントや改善ポイントをコメント形式で収集する。「ユーザーテストを開始する前、どの程度の量と質のフィードバックが集まるのかと不安を抱くお客様も多いですが、そこは問題ありません。利用したお客様からは、フィードバック量が多く、かつ改善に役立つコメントが多いといった評価をいただいています」
「ソクラテスト」の強みは、なんといってもテスト開始から結果受け取りまでの手軽さやスピード感だと田村氏は言う。「申し込みから支払い、結果の確認まですべてオンラインで完結します。申し込みの際に自社サイトのURLや競合サイトのURL、意見を聞きたい人の年代や性別を入れて、テスト開始ボタンを押せばそれで完了です。午前中に申し込めば、早くてその日の夕方、遅くとも翌日には結果がでています」
このスピード感の背景にはナビプラスが創業以来続けてきたECサイトの支援やマーケティングツールの提供のノウハウが詰まっており、「ソクラテスト」の質問項目もあらかじめ設計されているからこそだという。さらに、レコメンドやサーチ、レビュー等、サイトの改善サービスを開発、運営しているからこそ、ユーザーテストの実施に終わらず、その次の改善のアクションまで一貫して実施できることがサービスの利点だと2人は口を揃えた。
ナビプラスは今回の展示会で、「ソクラテスト」に新たに「AIによるサイトの改善提案」という機能を追加したことを発表した。ユーザーから収集したコメントを分析し、AIが具体的な改善提案を導きだすという優れものだ。田村氏はその狙いをこう説明する。
「『ソクラテスト』はユーザーのコメントが充実しているからこそ、すべてを読み切れず、アクションができていないというお客様がいました。日々の業務に忙しい運営担当の方はすべてを丁寧に確認する時間がないのです。そのコメントをAIに読ませることで、的確にポイントをピックアップし、改善のアクションに繋げやすくしてもらうのが今回のアップデートの目的です。よりスピード感を持ったアクションにつながるといいな、と考えています」
AIからの改善提案 | |
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商品使用前後の比較画像の追加 | 商品の効果を具体的に示すため、使用前後の比較画像を掲載することを提案します。これにより、ユーザーは商品の効果を直感的に理解できます。 |
現実感を出すためのユーザーの写真や口コミの追加 | ウェブサイトがすぎて頼性が低下するとの意見があったため、ユーザーの写真や口コミを掲載することを提案します。これにより、現実感を出し情頼性を向上させます。 |
目次リンクの追加 | 情報収集の効率化のため、ページ内の重要な情報への目次リンクを追加することを提案します。これにより、ユーザーは必要な情報をすぐに見つけることができます。 |
送料に関する情報の明示 | 2回目以降の送料が明確でないとの窓見があったため、送料に関する情報を明示することを提案します。これにより、ユーザーは購入時のコストを正確に把握できます。 |
「喜びの声」の具体化とページ遷移の改善 | 「喜びの声」の内容を具体的にすることと、「お試し」ボタンを押した後のページ遷移をスムーズにすることを提案します。これにより、ユーザーは商品に対する信頼感を持ちやすくなり、ウェブサイトの利用体験が向上します。 |
二人が知る限りでは「類似のサービスにAIを導入する流れは確認できていない」といい、「『ソクラテスト』が日本で初のAIを活用したユーザーテストなのではないか」と口を揃える。
AIの導入には労力や時間の削減等のメリットが考えられるが、初の試みへの懸念点やデメリットはないのだろうか。田村氏は「NO」と答える。
「開発担当としてサービスに関わってきていますが、現状考えられるデメリットはありません。心配されるであろう料金についても、アップデート後も変更していません。ユーザーテストは一般的に数十万円~数百万円ほど費用がかかると言われていますが、『ソクラテスト』は変わらず5万円/回から提供しています」
「ソクラテスト」、さらにはユーザーテストは今後どのようになっていくのだろうか。二人にそう投げかけると、こんな答えが返ってきた。
「現状、類似のアンケートテストやユーザーテストは、例えばWebサイトのリニューアルの時にだけ実施検討の土俵に上がります。しかし、我々が目指すのは『健康診断』のポジションです」
ユーザーテストに複数あったハードルをきちんと理解し、利便性を追及したからこそ、誰もが手軽に実施できるようになったユーザーテスト「ソクラテスト」。ユーザー目線の大切さを実感している社会だからこそ、Webサイト運営に不可欠な伴走者として活躍する日が近いのではないか。
「ソクラテスト」では競合サイトとの比較や偏差値による評価、ボリュームのあるフィードバックとそれをまとめるAIの新機能、さらにデザインやスピード等の項目別にテストを実施している。さらに初回テストのみ、一部の結果が閲覧できる無料トライアルを現在実施している。