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New Context
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現金を持ち歩くことが当たり前の時代は終わった。多様な決済手段が増え、カード一枚、スマホ一つあれば買い物ができる世界になった。一方で、キャッシュレス決済導入を躊躇する事業者も多い。決済端末の導入に、費用も手間もかかるからだ。そんな中、注目されているのが専用端末不要の「端末レス決済」だ。QRコードやNFCタグで決済ができるため、端末導入コストがかからず、レジすらいらない。
端末レス決済とは何か。未来の買い物体験はどう変わるのか。端末レス決済サービス「Cloud Pay Neo」を提供する、株式会社DGフィナンシャルテクノロジーのマーケティング部マネージャー、大竹啓太氏に話を聞いた。
株式会社DGフィナンシャルテクノロジー 営業本部マーケティング部マネージャー
大竹 啓太
2017年株式会社デジタルガレージに入社。アプリ開発会社向けにプロモーション提案をおこなう。2022年、株式会社DGフィナンシャルテクノロジーへ出向。端末レス決済サービス「Cloud Pay Neo」の立ち上げに携わる。
端末レス決済とはその名の通り、決済専用端末を用いずに決済を完了させることを指す。事業者はQRコードやNFC(近距離無線通信)タグを用意するだけで、クレジットカードやPayPayなど多様なキャッシュレス決済に対応可能だ。引越しや修理など、店舗を持たないサービスで特に導入が進められている。あらゆる業界で注目されており、導入企業は加速度的に増えているが、その理由は大きく2つあると大竹氏は言う。
「まず一つはコストが圧倒的に抑えられることです。当たり前ですが、決済端末は入手に費用がかかります。特に今は世界的に半導体が不足しており、電子機器の値段が高騰しやすい状況です。複数店舗への導入、従業員一人ひとりへの携帯となると、それだけ費用も膨らむことになります。
また、端末トラブルを避けられることも、端末レス決済が選ばれる理由の一つです。どれほど優れた決済端末であっても、『うまく読み込めない』『電源が入らない』といった問題が起こる可能性はあります。ずっと店舗に置いてあればまだいいですが、持ち運ぶ場合は落としたり、充電が切れたりといったトラブルが起きやすいです」
さらに、端末レスは消費者にとってのメリットも大きいとのこと。「自身のスマホの中でカード情報を入力するため、スキミングのようなカード情報を抜き取られるリスクも避けられるでしょう」
そもそも端末レス決済はテクノロジーの進化に伴って最近誕生したシステムだ。提供会社も、そのバリエーションもまだ多くはない。
「端末レス決済は、今のところ2種類しかありません。一つはQRコード決済です。事業者は紙やデータで決済に必要なQRコードを表示させ、消費者はそれをスマホで読み込みます。すると、専用の決済画面が立ち上がり、あとは必要な情報を入力すれば決済完了する仕組みです。あらかじめ設定すればPOSシステムとの連動もでき、決済と同時に『何が』『いつ』『どれくらい売れたのか』を自動で記録することも可能です。
一方で、NFCタグの場合、事業者に用意が必要なのは専用のICチップだけです。チップの費用はサービスによってバラバラですが、DGフィナンシャルテクノロジーが提供する端末レス決済サービス『Cloud Pay Neo』を利用する場合、コストはかかりません。消費者からすると、NFCタグにスマホをかざすだけで決済画面が立ち上がるため、利便性的にはQRコードよりも優れていると思います」
現在、端末レス決済を積極的に導入しているのは、引越し業者、修理業者、宅配業者など消費者のもとに直接行ってサービス提供をおこなう、店舗を持たない事業会社だ。さらに最近になって別の領域でも利用が増えているとのこと。
「イベントでの利用も増えています。最近も、とあるイベントの飲食店ブースの支払いに端末レス決済を導入したケースがありました。また、BCPと呼ばれる、端末トラブルが起こった際の代替手段として導入する事業者さまも増えています。普段の支払いは、消費者の慣れている端末決済で済ませ、万が一端末が使えなくなってしまったときに備えて、端末レス決済を準備しておくという考え方です」
端末レス決済は、消費者の購入体験を大きく変える可能性を秘めている。たとえば「レジのない店舗」。消費者はわざわざ商品を持ってレジに並ぶ必要がなくなり、事業者は店舗をもっと広く使えるようになる。実際にDGフィナンシャルテクノロジーは、とあるアパレル企業と実現に向けた調整を進めている。
「今、アパレル企業さまと構想をしているのは、会計ゾーンのない店舗づくりです。お客さまは、欲しい商品を見つけると手元で決済を済ませ、店員さんに声をかけます。声をかけられた店員さんは、お客さまがすでに決済済みの商品を確認し、新品をお渡しするという流れです。スムーズな購入体験をお届けできますし、レジスペースをなくすことで、より洗練された空間づくりも可能になります」
さらに、端末レス決済は緊急時のインフラとしても機能すると大竹氏は語る。
「日本ではさまざまな自然災害が起こります。大変な被害をもたらした東日本大震災のときは、津波で電子機器が一式使えなくなり、現金しか取り扱えない店舗がたくさんありました。しかし、現金を引き出そうにもATMが使えず、そうなるともうどうしようもありません。もし、端末レス決済が整備されていれば、生活者のスマホさえ無事なら、通常通り買い物ができます」
未来の購入体験を大きく変える可能性のある端末レス決済。DGフィナンシャルテクノロジーが提供する端末レス決済サービス「Cloud Pay Neo」には、2つの特徴がある。
まず1つ目は、導入コストが抑えられること。専用端末の代金が不要なことはもちろん、複雑なシステム設定の手間も不要である。決済処理に必要な操作画面はすべて同社が用意したものを利用できる。管理画面は、サービス利用企業からの要望をもとに高頻度でアップデートされており、消費者の最適な購入体験のため、ブラッシュアップが繰り返されている。
2つ目の特徴はトラブルが少ないこと。電子端末が不要な分、端末を使った決済より不測の事態が起こる可能性が低いことは前述の通り。加えて、DGフィナンシャルテクノロジーは、デジタルガレージグループとして長年培ってきた技術力により、システムエラーを起こしにくい。現在、実績が重視される公金分野にも導入実績があることは、安定したシステム提供が長年行われてきたことを示している。今後のサービスの展望についても話を聞いた。
「まずは引き続き、Cloud Pay Neoの利用企業を増やしたいです。まだ本格的な営業活動を始めて一年未満ですが、ありがたいことに、多くの会社さまからお引き合いをいただいています。一社一社のご事情に寄り添い、スムーズな導入をサポートできればと思っています。
併せて、さらなるサービスの改善も進めています。詳細は、しかるべきタイミングで発表して参りますが、直近では自治体向けの機能を追加実装する予定です。引き続き、端末に依存しない決済が当たり前の世界づくりに貢献し、最終的には世の中の端末を0にしたいです」
あらゆる決済サービスが出現するなか、端末に頼った決済はいつか限界を迎えるのだろう。SDGsの観点から考えても、決済手段が増えるたびに新しい端末を開発し続けることはナンセンスだ。近い将来、訪れるであろう端末レス決済が当たり前の世界で、普段の買い物がどう変わるのか楽しみである。