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林 郁

代表取締役 兼
社長執行役員グループCEO

CEO Comment Vol.70 『2020.3期決算サマリーと新中期経営計画ダイジェスト』

Designing our New Normal Context

〜 新しい秩序での、更なるDXコンテクストの創造 〜

 本日の取締役会での承認の上、2020.3期決算短信〈IFRS〉(PDF)と新中期経営計画を発表いたしました。以下2020.3期決算サマリーとなります。

Ⅰ. 2020.3期連結決算サマリー

 国際財務報告基準(IFRS)適用2期目となる2020.3期連結経営成績については、収益36,936百万円(前期比3.5%増)、税引前利益10,008百万円(同25.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益7,420百万円(同24.1%減)と増収減益となりました。リカーリング型事業から生じる収益(フィナンシャルテクノロジー事業、マーケティングテクノロジー事業)は、前期比17.5%増と好調に推移しました。一方で、インキュベーションテクノロジー事業において、保有株式の公正価値評価益が減少し、円高による外貨建資産の目減額13億円、本社増床による一時費用10億円等を計上したため減益決算となりました。

 又、以下に、新型コロナウイルスによる影響を2枚のスライドにまとめました。

 新型コロナウイルスのパンデミックで、主に第4四半期で経験をしたこともないような株の乱高下や、国難とも言える緊急事態宣言に繋がる事態となりましたが、上のスライドの通り、FTセグメント、MTセグメントではすでにデジタルシフトが進んでいる会社やサービスとの連携が多く影響は比較的軽微に留まりました。これまでの3カ年を振り返っても、リカーリング事業合計の年平均成長率は16%と目標を超過する結果となり、投資ハードルレートに関しても3カ年で2.2倍と、2018年3月期から2020年3月期の3カ年の目標は概ねクリアしたと認識しています(以下、「3カ年中期経営計画の振り返り(2018.3期 – 2020.3期)」スライドをご参照下さい)。尚、既に始まっている新年度に関しては新型コロナウイルスによる現時点での様々な影響を考慮し、今回は前中期経営計画より長いスパンを設定して、五カ年での経営計画としました。

 2020.3期における事業セグメント別概況は以下の通りとなります。

FT(フィナンシャルテクノロジーセグメント)
 2020.3期のFTセグメントの収益は、前期比15.6%増収、税引前利益は同20.9%増益の4,049百万円と二桁の増収増益かつ過去最高益の業績となりました。KPIである決済取扱高は、前期比24%増の2.6兆円、決済取扱件数は、同24%増の4.9億件と好調に推移しました。期末にかけて、インバウンド及び旅行関連向けの決済は減少しましたが、主力のEC及び対面決済の拡大が加速して全体として成長が継続しています。

MT(マーケティングテクノロジーセグメント)
 MTセグメントの収益は、前期比19%の増収、税引前利益は1,853百万円と前期比52%増益と大きく改善いたしました。主力のパフォーマンスアドは、金融・決済事業者向けの広告需要を取り込み、かつ、収益性の改善が進んでいます。DXクライアント向けに、デジタルプロモーションからアプリ/ウォレット開発、データ活用施策まで一気通貫でのソリューションの提供を加速させています。さらに、日本初のマスメディアコンソーシアムを展開しており、中期的な広告主とメディアにおける「ポストクッキー」時代の新たなマーケティングコンテクスト基盤創造を目指しております。

IT(インキュベーションテクノロジーセグメント)
 ITセグメントは、期末における保有株式の公正価値評価額と前期末の評価額の差分がIFRS損益計算書に収益として計上されることが特徴です。収益は、前期比39.3%減、税引前利益は同48.3%減の3,563百万円となりました。前期の大型売却の評価益が剥落したうえ、円高による外貨建て株式評価額の目減りの影響が約12億円発生したことによります。一方で、ITセグメントの重視する指標である貸借対照表価値、つまり営業投資有価証券価値は、36,546百万円と前期末に比較し98億円増加しております。

LTI(ロングタームインキュベーションセグメント)
 LTIセグメントは、投資先株式の継続保有及び新規の事業開発による事業利益の長期的な成長を目指すセグメントです。主力のカカクコム(東証2371)の業績は、順調に拡大し、持分法投資利益の増加に貢献しました。また、東京短資との合弁会社である連結子会社Crypto Garageは、暗号資産関連サービスの開始を6月から順次はじめて行き、新年度中には本格稼働し、ブロックチェーン金融サービスをグローバルに展開していく予定です

Ⅱ. 新中期経営計画ダイジェスト

 2021.3期より、新たに5か年の中期経営計画を策定しました。定量目標は、前回と同様、リカーリング型事業においては、成長率指標、IT投資事業においては投資ハードルレートを設定しました。リカーリング型事業であるFTとMTセグメントにおいて、前中期計画の目標利益成長率15%はほぼクリアし、今回より高い20%の利益成長を目標としました。LTIセグメントは15%成長を目標とします。また、資本収益性指標は、引き続きROE:20%と設定しました。株主還元指標については、IFRS任意適用企業として、キャッシュフローを伴わない、主にITセグメントの公正価値評価益等を排除し、年間事業キャッシュフローを分母に20%の配当性向を目標として新たに設定いたしました。

 デジタルガレージは、今期からの新中期経営計画を、「Designing our New Normal Context」というコンセプトのもと、次の五カ年に向け始動します。COVID-19が、縦割り社会モデルの崩壊や実験的規制緩和の加速を導き、生活、経済、教育、医療を中心に、New Normalが生まれつつあります。さらにグローバルで、段階的ではなく、最新技術を用いたサービスや事業がLeapfrogging的に進化する時代の波が加速しています。一つの企業にとどまらず、産官学の垣根を超えた、世界的なテクノロジー大陸(Digital Pangaea)が生まれ、様々なデジタルシフトが地滑り的に起きていくことは明らかです。DGが走り始めたインターネットの黎明期と同様に、国や企業、非営利団体、教育機関などの壁を超えて、改革を急速に進めるコーディネーションが不可欠と感じています。前中期経営計画でオープンインキュベーションを推進してきたDGが、グローバル規模の様々なパートナーと連携を加速させ、動的平衡(Dynamic equilibrium)と不偏不党(Neutrality)を保ちながら、継続して国際社会に役立つコンテクストを創造していくときだと、強く認識しています。

 いかなる状況下においても24時間365日の稼働が責務であり、国の「重要インフラ」指定企業として社会的責任を担うFTセグメントは、DGグループの強みを活かし、Key Factor にCashless、Contactless、Regulationの3つをあげ、New Normalの時代を支えていきます。新型コロナウイルスの感染拡大を受け変化が加速するなか、DGは対面決済、非対面決済領域ともに、時流や生活者のニーズを注視し、最先端の決済技術の活用を通じ、デジタルビジネスを包括的にサポートしていきます。また様々なデータをハイブリッド化することで、Leapfrogging Fintech事業の創出を目指します。

 以下FTセグメントからみたリカーリング事業のスライドをご覧ください。

 MTセグメントは、New Normal時代の「デジタルマーケティングエコシステム」の確立を目指します。DX先進企業に向けたデジタルアドを更に伸長させつつ、DX途上企業に向けたブランドアド型マーケティングをセグメント事業の第2の柱へと育成していきます。2018年から大手メディア40社以上が参画し、デジタルガレージが事務局として携わる「コンテンツメディア価値研究会」を軸に、アドフラウドへの対応や、厳格なブランドセーフティの担保、コンテンツ価値の高いクオリティメディアの適正な媒体費設定など、クッキーレスの時代のデータマーケティングを見据え、クオリティメディアに良質な広告が集まり、ユーザーにあわせたコミュニケーションを可能にするメディアデザインを推進する準備を着々と進めています。

 次に、ITセグメントです。今回のパンデミックが世界規模で「生活、経済、教育、医療」などの様々な領域にわたり、地滑り的なDX(デジタルトランスフォーメーション)化を引き起こすと確信します。その結果、投資先のICT事業会社では、急ブレーキのかかる領域の会社と、むしろ加速する領域の会社へと2極化する様相を呈しています。一方で、新興国では、Leapfrogging(一段階飛び越えた進化)な事業創出が突然変異的に起こる可能性が増しています。創業より25年間でネットワークしたグローバルなパートナー企業と連携しながら、バーベル戦略によるリスク分散手法で、今までの常識にとらわれない、柔軟な投資・インキュベーション事業を継続します。

 LTIセグメントでは、2019年に金融分野第1号となる規制のサンドボックス制度の認定を取得し、「SETTLENET」を活用し、円建てトークンの発行及び暗号資産の同時決済サービスの実証実験を開始していたクリプトガレージが、サービスの商用化に向けて準備中です。パンデミック後、ビットコインの半減期をむかえ、マーケットは再度活性化しています。日本発のクリプトアセットの領域でグローバルプラットフォーム事業に本格着手します。

 次に、グループのR&DのエンジンであるDG Labについて説明します。コアパートナーであるカカクコム、クレディセゾン、KDDIと共同で、ブロックチェーン、AI、xR、セキュリティ、バイオヘルスの5つの重点にフォーカスし研究開発、事業化を継続して推進してきています。またこれらの5つの重点分野を投資対象領域とし、国内外の有力なスタートアップ企業への投資インキュベーションを実行するDG Lab Fundは、昨年2号ファンドを組成しました。1号ファンドと2号ファンドをあわせて総額約250億円規模のファンド運用を目指して展開しています。DGグループ、パートナー企業、ファンドのLP各社との連携を通じ、今後もブロックチェーンテクノロジーを活用した第2段フィンテック事業や、AIと連携とした情報銀行プロジェクト、バイオヘルスカテゴリーにおける新規プロジェクトなど、様々なプロジェクトが生まれてきつつあります。

 中期経営計画のコンセプトである「Designing our New Normal Context」はビジネスだけでなく、ESG領域の企業DGのコミットメントも内包しています。すでに私達は、環境系スタートアップをインキュベートし、渋谷区と連携したプロジェクトや、アーティストの坂本龍一氏が主宰する、東北の子どもたちの心の成長の支援に向けたプロジェクト「東北ユースオーケストラ」等を微力ながらサポートしてまいりましたが、グローバルでは今回、取締役 共同創業者の伊藤穰一やリード・ホフマンらが立ち上げるNPOを本格的にサポートしていきます。世界のバイオテクノロジーのメッカであるボストンの有識者らのネットワークにより推進する、COVID-19に向けたプロジェクトを皮切りに、様々なプロジェクトをDGグループと連携し、New Normalを創り出す社会貢献型のプロジェクトを支援・推進します。

 次のスライドに概要を記載しましたので、御覧ください。

 100年ぶりのパンデミックは、人類に様々な災いをもたらしました。一方で、産官学の垣根を超えた、インターネット普及後初めての世界的なテクノロジー大陸(Digital Pangaea)が形成されつつあります。
今年25周年のデジタルガレージは、創業当時より変わらず今後もコンテクストカンパニーとして、次なる5年間にむけて、「Designing our New Normal Context」のコンセプトのもと、継続してグローバル社会に貢献して参りたいと思います。

 株主を含むステークホルダーの皆様におかれましては、より一層のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。


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